酵素剤利用による麦焼酎の試醸(第2報)
(無蒸煮仕込における酵素剤の利用)
化学部 醸酵食品科
英知昭男
宣義国拓
田森江枝
樋長吉時
江井ケ嶋酒造大分工場
1.はじめに
麦焼酎の製造工程では,デンプンのα
化を図る目
的で通常1kg/′
cm
2の圧力で1時間程度の蒸煮処理
を行っているが,最近工程の省力化と特徴のある酒
質を得る目的で,掛原料を粉砕後無蒸煮又は低温蒸
煮で,生デンプン分解力のあるグルコアミラーゼを
主成分とした酵素剤添加による試醸が試みられてき
た1)2)。
本鞘では,無蒸煮仕込における酵素剤の添加効果
をグルコアミラーゼ,酸性プロテア」ゼについて検
討し,あわせて工場規模での試醸を行ったので報告
する。
区を設定した。
糖化は,270Cの振遣培養器で連続的に反ん己こさせ, 経時的に生成したグルコース量の全糖に対する百分
率を糖化率とした。
(3)無蒸煮複式発酵による試醸
表−1の配合により麹歩合0∼50%の区分に対し
てグルコアミラーゼは掛麦1gに5∼2()U
の4段
階合計15試験区とした。酸性プロテアーゼはグルコ アミラーゼ10u/g添加区に5,10u′ /′ gの2試験区と した。
発酵経過は上記の配合でメイセル管(H2SO。トラ ップ)を付した1J 三角フラスコに仕込み,250Cイン
キエペ一夕ー中で経時的にCO
2発生量を重量法で
計測し,グルコース,エチルアルコールも同時に分 析した。(表−1)
同様に各pH
における発酵経過を把握するため麹
歩合50%の試験区においてpH
3.0,3.5,4.0,に調
整後グルコアミラーゼを5,10u/′ gそれぞれ添加し 試醸した。さらに,添加酵母数が発酵経過に及ぼす 影響を検討するため,もろみの酵母濃度1059106ぅ 107/′ nl l のオーダで試醸した。
(4)工場規模での試練
無蒸煮仕込の工場規模への応用を検討するため,
総原料1150kg,麹歩合44%で図一1のフローで仕込
み,経時的にグルコース,エチルアルコールを分析
した(図1)
熟成もろみは成分々析後,減圧蒸留(アルコール
度数7度でカット)した。次に25度に割水し通常の
イオン交換処理を経て′ 離巨試験に供した。
(5)分析法
酵素活性:既法3)に従いグルコアミラーゼは2%
肌′h 97、、、
2.実験方法 (1)原 料
掛麦:大麦(デンプン価70)を,粉砕機で平均粒
子径0.5mmに調整した。
麹:既法3)どおり処理した蒸煮麦に As p.Kaw
a−
Chi i を種菌として,自動製麹装置で40時間製麺した。 分析値は既報3)参照。
酵素剤:グルコアミラーゼは上田化学工業㈱製グ ルターゼS(グルコアミラーゼ活性6000u/′ g),暫性
プロテア」ゼ は同社製オリエンターゼ5A(酸性プ ロテアーゼ活性50000u/g)を使用した。
酵母:鹿児島協会1号酵母をYM
培地で108′
/1111
のオーダに培養した。
(2)糖化試験
300m
l 坂口フラスコに粉砕麦40gと水80m
l を
加え,防腐剤としてトルエン1m
l を添加し,20%ク
エン鞍で所定のpHに調整した。次にグルコアミラ
表−1仕込配合と最終アルコ叫ル濃度
816.416.616.
*酵母濃度 2×105/ml **酵母濃度 2×106/′ ml
撫養煮仕込み
(麹)大麦(350K8ト蒸煮→鮎覿→潤母(753L)
†
「5。
水(420L) 1 14日 27−32−C 二次もろみ(2702l 一)→最終もろみ
† (2631L)
水(1600L),辞表 (紺) 大麦(800K8)岬〉叩
平均㍑予後0.51ml l
藤給仕込み
(麹) 大著(350Kg)→蒸煮→製麹→酒母( †
水(420L)
(紺) 大麦(800Kg)→蒸煮 +−
750L)「5。
1 14日 27−32℃
w二次もろみ(2980L)→最終もろみ
† (2935L)
水(1305L)
図−1エ場規模での仕込フロー
可溶性デンプンを基質に40〇C,30分反応させた時の 還元糖をグルコースとして定量し,10mg生じた時の
酵素力を1単位(1U
)とした。酸性プロテアーゼ
は0.5%カゼインを基質に300C,10∼60分反応させ
圭Tol i n法により1分間に1/J gのチロシン相当量を
1単位(1U)とした。
糖・エチルアルコール:ⅠI PI ,C(カラム Shodex
S−801,潜煤水,検出器RI )により分析した。
歩合の条件下でも,生デンプンの糖化によるグルコ
ースの供給が可能なことが推定された。(図2)
3。結果と考察
(1)糖化試験
基質が無蒸煮にもかかわらず図一2のように20U
添加区では,5日間反応後の糖化率は60%程度で
PH3.5∼4.5においても充分糖化反応が進行した。10
U
添加区では約40%の糖化率を示し,5U
添加区で
は22∼30%で20U
区の悠程度の糖化率にとどまっ
た。1三しとのことから無蒸煮仕込における低pH,低麹
〟 98
4 5([]) 1 2 3
図−2 糖化試験
(P H
3.5へ′
4.5 G
l uc oam
yl as e 5
(2)無蒸煮仕込における酵素剤添加
麹歩合0∼50%におけるグルコアミラーゼ剤添加
による発酵経過を図3∼6に示す。麹歩合50%の酵
素添加区では,発酵前期でCO
2発生量の差が10∼15
gあったものの10日経過後CO
2の発生は停止し発酵
終了時のアルコール濃度は16.4∼16.9%を示し近似
した。しかし無添加区では,発酵も緩慢で終了時の
アルコール濃度は14.8%しか生成せず,麹単独での 無蒸煮複式発酵は不充分であることが判った。(図3
6)
CO
2
10叫
図−5 麹歩合12.5%におけるグルコアミラ州
ゼ添加試験
(PH4.O GAo∼20U′ /′ ′ g)
//す/一一12
/83
,← /√一/ ′
一′個2や 20t l @−10u
△ − こ)し1
「レ OI J //二
二二て二ニム1
//釘/////
−、 ユ
T ト1【「+≧T ト †5 10 14(ヨ:〉
図一3 麹歩合50%におけるグルコアミラーゼ
添加書式験
(PH
4.O
G
Ao∼20U
/g)
10 14(ヨ)図−6 麹歩合0%におけるグルコアミラーゼ
添加試験
(PH4.0(;Ao∼20U′ ′ ′ ノg)
麹歩合が低減するにつれ,この傾向は顕著となり
麹歩合25%では最終アルコ」ル濃度が13.4%∼16。6
%,麹歩合12.5%で11.8∼15.4%,麹歩合0%で
10.3∼13.0%の値を示した。各試験区とも20t J まで は酵素の添加量に応じCO2発生量も漸増した。
酸性プロテアーゼの添加は試験区22∼24とも,対
照区の発酵経過と一致したことから,アルコール\生 成に及ぼす効果は蒸煮仕込みの場合と同様確められ なかった。
(3)無蒸煮仕込における仕込pH
,添加酵母数の
麹歩合50%,仕込pH
3.0,3.5で試醸の結果図 7
に示すとおりアルコ」ル濃度はそれぞれ9.0%,14.9 %となり対照区に比べ2ヘノ7%イ隠値であった。(図
7)
99
・
∵
「 T T † †
〇 10 14(□ )
図−4 麹歩合25%におけるグルコアミラーゼ
添加試験
遅れたものの7日冒で16.0%となり,14日経過後,
無蒸煮法で16.9%,蒸煮法で16.4%の値を示した。
最終もろみの成分組成を表〟2に示す。(図9,表
2)
5 10 14(卜1)
図脚7 PH
3.0∼4.0におけるグルコアミラー
ゼ添加試験
(麹歩合50% GAl O,20U′ ′ ′ g)
=
ニニニ念∵二∴二∴=コ
グルコースの消長は対照区(pH4.0)では1%以内
で移行したが,低pH
域においては発酵前期5∼7
%の蓄積が確められ発酵中期は漸減し1%以内で推
移したものの,発酵終了時3∼4%の値を示した。
低pH
域における無蒸煮仕込では,糖化は円滑に
進行するものの発酵は抑制される傾向にあるため仕
込pH
は4.0付近が望ましい。(図8)
〕 10 (日)
同一9 エ場規模でのアルコール、グルコース
の消長
表−2 最終もろみ成分組成
蒸煮仕込み 無蒸煮仕込み
PI I (2げユC)
酸 度 アミノ酸度
Gl i i cos e
Gl 〉7Cel i ne
Et −OH
Acet e Al d
Et h)71Acet
Pr opyトOf I
i ・But hyl OH トAmyl OH
4.01 9.5 9.2 0.2% 1.0% 16.4%
7 pp汀1 60 ppI ¶ 81ppm l 冊 ppm 280 ppm
4.10 10.5 12.8 0.1% 1.0% 16.9%
12 ppn1
64 ppm
58 ppI m
130 ppm
33n ppnl
Gl ucos e%
1 2 3 /1 5(日)
図8 発酵初期における糖の消長減圧蒸留後25度に割水し,通常のイオン交換処理
した製品の官能評価は,蒸煮法,無蒸煮法ともに良
好であった。 添加酵母数は通常のもろみ濃度(107/ml オーダ)
を保持すれば発酵は順調に進行するが,105オーダで は発酵初期に4%程度の糖が蓄積し最終ア′ ルコール 濃度も11.5%にとどまった。
(4)工場規模での試醸
以上の結果より工場規模での試醸は,仕込みPH
4.0,麹歩合40%,くみ水歩合150%,ブルコアミラ
ーゼ10u′ ′ /g(掛原料)に設定した。発酵経過は図−9に示すように糖化,発酵のバラン スがうまくとれグルコ」ス濃度1%以下で推移し, 生成アルコール濃度は無蒸煮法の立ちあがりが若干
w¶ 100
4。まとめ
生デンプン糖化力を有するグルコアミラーゼを使
用し無蒸煮法による焼酎試醸試験を行い次の結果を
得た。
(i )糖化は無蒸煮処理でもpH3.5∼4.5で充分進行
したが,発酵は低pH
域では抑制された。
し,掛原料が無蒸煮にもかかわらず一定の条件下で
は麹歩合を低減しても充分発酵が可能で醸酵歩合も 90%以上の値が得られた。
(3)スケールアップした場合で も通常法と同等の発
酵経過を示し,イオン交換処理した製品の官能評価
は良好であった。
参考文献
(1)松元他 日本農芸化学会誌\′
r O
l .59,N
o.3,P.
265∼,1985
(2)久保田他 アミラーゼシンポジ ウムp.169
(1984)
(3)樋田他 大分県工業試験場年報p.147(昭和
60年度)